新規就農者と離農|農業を支える人口の増減と国による支援。

農林水産省のデータによると2013年の新規就農者数は50,810人となっており、2010年以降は50,000人前後で推移しています。また、新規就農者のうち40歳未満の青年層の割合は13,000~15,000人前後となっています。

担い手不足と農業就業者の高齢化の問題はニュースなどで見聞きしますが、皆さんはこの新規就農者数を多いと感じるでしょうか?それとも少ないと感じるでしょうか?

日本の食文化を支えているといっても過言ではない農業就業者について今回は考えてみたいと思います。

新規就農者と離農

40歳未満の青年層が年間13,000~15,000人前後、農業の世界に入っていることを冒頭でご案内しましたが、この新規就農者が5年以内に離農する割合はどの程度かご存知でしょうか?

なんと、、、
新規就農者の約3割は生活が安定しないことから5年以内に離農しているのです。

そのため、新規就農者のうち農業に定着する青年層は毎年10,000人前後といわれています。
夢を抱き、農業の世界に足を運んだ新規就農者がなぜ夢半ばで離農することになってしまうのでしょうか?そこには我々がなかなか知ることができない農業界の苦労と、その苦労を軽減しようとする国策が見えてきます。

ほんの一部ではありますが、それらを掘り下げて確認していきたいと思います。

新規就農者が直面した苦悩とは?

新規就農者が実際の就農で苦労した点はどのようなことなのでしょうか。
全国農業会議所が2013年に新規就農者を対象に行ったアンケート調査で明らかになった要因は主に以下の3つ。

  1. 農地の確保
  2. 資金の確保
  3. 営農技術習得

今回は「資金の確保」と「営農技術習得」の問題について掘り下げてみたいと思います。
「農地の確保」については農地法が絡み、とても複雑になるのでまたの機会に説明していきます!

新規就農者に対する支援

持続的で力強い農業構造を実現するためには、900,000人の農業就業者が必要といわれています。これを60代以下の年齢層で安定的に担うには、青年層の新規就農者を毎年20,000人前後確保していく必要があるといわれています。

冒頭で説明したように、新規就農者が農業に定着するのは毎年10,000人前後といわれているため、目標の20,000人には遠く及びません。

このような中、青年の就農意欲をかき立てるとともに就農後の定着を図る施策が実施されています。

給付による支援

一定の条件を満たす45歳未満の就農希望者と新規就農者を対象とし、就農前の研修期間(準備型、最長2年間)及び経営が不安定な就農直後(経営開始型、最長5年間)の所得確保を支援する「青年就農給付金」の給付が行われています。

給付額は年間150万円で、最長7年に渡り受給することができます。

給付条件や離農した場合の取り決め等で賛否両論ありますが、自らが代表を務め、農業で独立をしていくことを決意した人にとってはとても心強い給付金です。

研修による支援

農業法人等への雇用を促進するため、農業法人等が新規就農者に対して実践研修等を支援する「農の雇用事業」が2008年度から行われています。農業法人が新規就農者に対して就農に必要な技術や経営ノウハウを習得させるための研修に対し、その研修費用を最長で2年間に渡り助成するというものです。

新規就農者が直接助成金を受け取れるわけではありませんが、研修を行う立場の農業法人に対して助成することで、農業に関する教育の場が確立されていくといった支援内容です。

今後の課題

給付や研修による支援により、前述で述べた「資金の確保」と「営農技術習得」は多少なりとも新規就農者の負担軽減につながっていることが分かります。
こういった支援の効果もあり、農業界への新規参入者は増加しているようです。

ただし、これらの支援が実施されているにもかかわらず、毎年3割前後の新規就農者が離農の道を歩む現実もあります。

私の身の回りにも、若くして農業で生計を立てていくことを目標に掲げたものの、離農という選択を決意せざるを得ない状況に追い込まれてしまった方々を多く目の当たりにしています。

特に残念に思うのが、良い野菜を栽培することができたとしても、その野菜を売る手法を確立できなかった方々。
自ら良質な野菜を栽培し、販路も自らどんどん開拓していくようなスーパーマンのような人は別として、生産側と流通または販売側が上手く共存共栄できる仕組みや選択肢がもう少しあってもいいのではないか?と自問自答する今日この頃です。

もし、この記事を見ている新規就農者で将来に不安を抱える人がいたとしたら、田毎屋でどこまでのことができるか分かりませんが、お気軽にご連絡いただければと思います。

新規就農者が一番苦労するといわれている「農地の確保」については、冒頭でもお伝えしたとおり農地法から説明していく必要があるため、またの機会に解説していきたいと思います。

最後に

黙々と記事を書いていたら、新規就農者の離農率が高いような記事となってしまいましたが、実はそんなことはないんです。
新規学卒就職者が3年以内に離職する割合が中卒で63.7%、高卒で40.9%、大卒で31.9%もあるんです。※厚生労働省「新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移」より

農業に限らず、働くというのは大変なことなんですね・・・
私の実体験からいえることは、悩んだり壁にぶち当たったりしたら周囲の人に相談してみることをおすすめします。

責任感の強い方はそういったことを避ける傾向にあるようですが、人間一人でできることなんてたかが知れていますし、第三者の意見を取り入れることで道が開けることもあるので。
最後の最後で偉そうなことをいってしまい恐縮ですが、少しでもそういった苦悩を抱えている人の支えになれればと思い、私見も織り交ぜて記事を書いてみました。