有機栽培・特別栽培・慣行栽培の違いと野菜選び

野菜を購入する際、有機栽培や特別栽培などの表示を目にされた方は多いかと思います。これらの栽培方法の違いについてみなさんはその差をご存知でしょうか?目にする機会はあるものの、意外とその内容については知らない方が多いようです。本日は農産物の栽培方法について分かりやすく説明していきたいと思います。栽培方法の違いについて理解が深まれば、野菜選びが楽しくなること間違いなしです!

また、それぞれの栽培方法を理解することにより、今まで見えてこなかった課題や生産者の努力が見えるようになってきます。最後まで読んでいただければ野菜選びの視野がきっと広がりますのでぜひご覧ください!!

3つの代表的な栽培方法

栽培方法の名称については自治体独自の基準に基づいた栽培方法や農家独自の栽培方法などもあり、多種多様な手法が存在します。なかでも、一般的に広く周知されている代表的な「有機栽培」「特別栽培」「慣行栽培」の3つの栽培方法についてご紹介していきます。

有機栽培/特別栽培/慣行栽培とは

有機栽培
一年生植物は2年以上、多年生植物は過去3年以上に渡り化学系の農薬、化学肥料、土壌改良材をまったく使用していない田畑で栽培する手法を指します。なお、有機栽培では天然系農薬や天然系肥料(有機肥料)の使用は許可されています。

また、化学系の農薬や肥料を使用しなくなってから6ヵ月以上3年未満の田畑で同じ条件のもと栽培されたものは「転換期間中有機農産物」と呼びます。

日本で販売されている農産物や農産物加工品で「有機」「オーガニック」と表示ができるのは、JAS法で認定されたものだけです。

特別栽培
農産物が生産された地域の慣行レベルに比べて節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で生産された農産物を「特別栽培農産物」といいます。節減対象農薬の使用回数と化学肥料(窒素成分)の使用量の双方が50%以下でなければ「特別栽培農産物」という表示はできません。

特別栽培農産物は農林水産省のガイドラインでそれらの取り決めが事細かく定められていますが、このガイドラインに法的な強制力はありません。

しかし、一定のルールを設けて生産、流通することで消費者の信頼を得ると共に生産者の努力が評価されることにつながることから着実に普及・定着していくことが期待されています。

慣行栽培
有機栽培や特別栽培農産物などの表示が特にない農作物は「慣行栽培」で作られたものです。慣行栽培は化学合成農薬や化学肥料、化学合成土壌改良剤などを必要に応じて利用しています。使用してもよい薬品の種類は法律で定められていますが、使用回数の制限は作物の種類によって異なります。

また、同じ農産物でも都道府県によって基準が異なるため、使用回数にも違いが表れます。

栽培方法により異なる、価格と生産量の関係

それぞれの栽培方法についての違いは前述の通りですが、栽培方法の違いにより価格面と生産量に差が生じます。みなさんも既にお気付きかもしれませんが、有機栽培は化学系の農薬や肥料が使えないため草取りや虫取りを始め、多岐に渡る農作業の手間暇が多くかかってしまい、その分コストが上がってしまいます。また、有機栽培は手間暇がかかるため大量生産することは難しいとされています。図で表すと以下のようになります。

有機栽培の更なる理解へ

客観的事実として、認定を受けた有機農産物は信頼性の高いものであり、消費者にとって購入時の有益な情報の一つとなります。しかし、栽培手法だけでなく、その背景や課題も知ることでより深い理解へと繋がります。ほんの少しではありますが、有機栽培についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

有機農家の割合

「平成22年度有機農業基礎データ作成事業報告書」によると、全国の総農家数が253万戸なのに対し、全国の有機農家数は1万2千戸で全農家数のわずか0.5%という割合となっています。徐々に有機農家数は増加しているものの、まだまだ低い割合です。また、有機農家数の内訳は有機JAS農家が4千戸、有機JAS以外農家が8千戸という割合になっています。

有機JAS以外の有機農家とは?

ここで気になるのが、「有機JAS農家」「有機JAS以外農家」という言葉です。それぞれの違いは以下の通りです。

有機JAS農家
登録認定機関へ申請を行い、有機JAS認定を受けている農家。
有機JAS以外農家
登録認定機関へ申請は行っていないものの、実質、有機農法を営んでいる農家。

「有機JAS以外農家」の農産物は認定を受けていないので、販売する際に「有機」という言葉を使用することができません。一見、せっかく有機農法を営んでいるのに認定を受けないのはもったいないと感じられる方も多いかと思いますが、そこには様々な農家の思惑があります。例えば・・・

  • 長い年月をかけて消費者と信頼関係を築き上げてきた農家にとって、新しくできた規定や枠組みは不要と考えるケース。
  • 認定を受けることによって継続的に発生する管理面などの手間暇を考慮し、その時間を農業に費やしたいと考えるケース。

この他にも様々な理由により認定を受けない農家が多数存在します。

有機JAS認定について

有機栽培は慣行栽培と比べてはるかに手間暇がかかり、価格も高い傾向にあります。有機栽培は単に農薬や化学肥料が使用できないことにより手間暇がかかるだけでなく、他にも農家への計り知れない負担が存在します。それでは、有機JAS認定を受けることにより農家にとってどのような負担があるのかを、ほんの一例ではありますが見ていきましょう。

年次監査

認定後も有機JASの規格に基づいた栽培を行っているかどうかを確認するため、1年に1度の年次監査を受ける必要があります。

栽培記録の管理

農産物を栽培する田畑の管理記録や有機加工食品の製造に関する記録管理が必要となります。例えば、生産工程管理、格付管理、出荷管理等々の様々な記録を管理していかなければなりません。

認定費用

農薬や化学肥料を使用せずに農業を営んでいたら誰しもが有機JAS認定を取得できるわけでなはく、定められた方法により登録認定機関へ申請を行い、認定を得る必要があります。この認定に伴い、申請時のみ発生する費用もあれば毎年発生する費用もあります。例えば、申請手数料、検査手数料、監査手数料、実地監査手数料、実地監査員の交通費など様々な費用が農家の負担となります。

更に先を見据えた野菜選び

代表的な3つの栽培方法のなかでも特に制限のある有機栽培について詳しく説明をしてきましたが、本当にこの3つの栽培方法だけが野菜選びの際のポイントといっていいのでしょうか。有機栽培にはJAS法に基づく厳格な基準が制定されており、特別栽培にはガイドラインで事細かな基準が示されています。

しかし、前述で説明した通り、それらの認定や基準をクリアするために農家は並々ならぬ努力を惜しまなければなりません。普段、目や耳にする機会がほとんどない農家の見えない努力や想いを知ることができれば、より充実した野菜選びができるのではないでしょうか。

農家の想い

私が知っている数多くの農家は、有機栽培の定義をクリアする農法自体は決して苦にならないと語ります。なぜなら、本気で食の安全を考え抜いて農業に携わっている方々ばかりだからです。なかには、有機栽培で認められている農薬や肥料すら使用していない農家もいらっしゃいます。申請をしてその後も継続的に労力のかかる認定自体への負担を考慮し、「有機」という表示を使用しない道を選択する農家が数多く存在しています。

田毎屋を運営している私は農家の方々と面前や電話で打ち合わせをする機会が多いのですが、「日が出ているうちは畑にいたい」という理由で打ち合わせの時間は夕方から夜間にかけてが多くなります。日が昇る朝方5時前後から日が沈む夕方18時前後まで畑に出っぱなし。夜間は翌日の天気予報などを確認して収穫や種植え計画を練る。

思わず、「大変ですね」という言葉が出てしまいますが、私の知っている農家は口をそろえて「どの仕事も大変ですから農業だけが大変だと思いません」と語ります。古くから日本の食を支え続けてきた農家ならではの優しさや気遣いだけでなく、内に秘めた強さまでうかがえます。

信頼関係こそが大切

農家の想い、性格、方針などは必ず野菜の味や安全性に繋がってきます。型にはまった基準は客観的事実としてとても有効で有意義な情報の一つとなりますが、様々な要因によって型にはまることのできない現実やあえて型にはまらない選択を取る人々がいます。実際には有機栽培と同等、もしくはそれ以上の農業を営んでいたとしても、世間一般的な表示は慣行栽培となっている野菜が日本にはたくさんあると思います。

田毎屋は、一定のルールのもとに区分された栽培方法だけを表示するのではなく、農家ごとの方針や想いも伝えることにより、お客様にとって更に先を見据えた野菜選びができるような取り組みを行っています。
一番大切なことはお客様と農家との信頼関係であり、田毎屋はその架け橋になれればと考えます。サイト内で顔、名前、畑を公開していることにより、その想いや方針に後ろめたい言動が一切ないんだと感じていただければ幸いです。

まとめ

野菜選びに限らず、信頼関係はとても重要です。なかには嘘をつき、人を騙して生活する人も数多く存在します。田毎屋が契約を結ぶ農家はサイト責任者自らが足を運び、野菜を食べたり田畑を見るだけでなく、農家の人柄や想い、方針をしっかりと見極め、信頼しうる農家のみと契約をしています。そして、契約農家が信頼している農家を更に紹介していただき、その輪を広げています。ただの野菜の通信販売で終わらせたくないという想いから、栽培方法の更に先に見え隠れする「何か」をお客さまに感じ取っていただけるようなサイト運営に努めてまいります。